くらしの健康診断
2026年09月07日 [くらしの健康診断]
終末期の医療的ケアに関する判断:口から食べられなくなった時にどうするか?

司法書士の清水です。
当所では常時50名近くの方の被後見人(任意後見含む)の生活サポートをしています。成年後見人(保佐、補助)は本人に代わって財産管理や支払い、施設選びや福祉サービスの契約などを行います。しかし、すべての行為を代理して行えるわけではありません。できないこともあります。
できないことのひとつに「手術や延命処置の有無・看取りへの対応など医療行為への同意」が挙げられます。
今回は「口から食べられなくなった時にどうするか?」をひとつの例として取り上げ、その時の後見人としての対応方法をお伝えします。
なお、医学的なことについて言及する箇所がありますが、医療従事者でないため、専門的な方からみると厳密な表現方法になっていない場合もあることをご了承ください。
医療的行為への同意は誰がするのか?
ご本人が元気な時にエンディングノートなどにご自身の意思を書き残していたり、お元気な時に自分の希望を親族に伝えてくれているとよいのですが、そのようなことは非常に稀です。ご親族と連絡をとって本人の代わりにご親族に判断・同意してもらったり、ご親族がいなかったり疎遠な場合は医師にその時の状況に応じて判断を委ねることになります。
認知症の方の晩年において医療的判断・同意を求められることが多いのは「口から食べられなくなった時にどうするか」です。
口から食べられなくなるってどういう状態?
認知症や老化による機能低下によって食べ物を「かむ力」や「のみこむ力」が弱くなります。「かむ力」が弱くなったらきざみ、ミキサーなど食べ物をかまなくても大丈夫な形状に変えます。
「のみこむ力」が弱くなったら食べ物にとろみをつけてのどごしをよくして飲み込みやすい形状に変えます。
それでも、のみこむことのできない場合が出てきます。
食べ物をのみこめないのに食事をしてしまうとどうなる?
食べ物がのどに残ってしまうことで、雑菌がたまってウィルス性の病気になるリスクが大きくなります。唾液や食べ物、誤って気道に入っても、せき込みも弱くなっていることがあるので「誤嚥性肺炎」につながるリスクが大きくなります。
「誤嚥性肺炎」になると、主に発熱、咳、痰、呼吸困難の症状が出て、体力が落ちて死に至る場合もあります。
痰の吸引が頻回になると、24時間看護師が常駐していない施設の場合は対応できずに入院になることもあります。
「誤嚥性肺炎」のリスクがあるときの判断
口から食事を食べるのを続けるのか?それとも別の方法にするのか判断する必要が出てきます。病院を受診し検査したり、施設内の言語聴覚士や理学療法士が嚥下機能(かむ、のみこむ力)の評価を行ったりしたうえで、施設の看護師などから親族に直接説明し@かAどちらがよいか、判断してもらいます。
@リスクを承知の上で、口から食べつづけさせる。
窒息で死に至るケースがある、痰の吸引が頻回になると入院ケースがある。
食べることが大好き、生きがいの人の場合、親族はリスクを覚悟で選択することが多いです。
A胃ろう(胃に直接、食べ物を流し込める管をつける)にする。
口から食べられないとかわいそう、内心では長患いしてしまうと何かと大変ということで選択しない親族もいる。
※既往歴やお身体の状況によっては、胃ろうが難しい場合は経鼻経管栄養など他の方法を提示される場合もある。
親族に精神的負担が重くのしかかる
@、Aどちらの選択をしなければいけない親族には多大な負担がかかります。特に被後見人の叔父叔母とは幼いころに会ったきりなど縁遠かった甥・姪の皆さんにとって、本人の気持ちや考えを察することは難しく、苦渋の決断を迫られることになります。
最近では実のお子さんであっても選択が難しい場合もあります。
「進学を機に親元を離れ、結婚独立し、親と会うのは盆暮れ正月で深い話をしてこなかったから、いきなり生死を分けるような決断を迫られてどうしたらいいんだろうか」と途方に暮れてしまう方も多いです。
後見人ができることは?
ご高齢の方のいらっしゃるご親族はいつ何時、重要な決断を迫られるかわかりません。突然の出来事に戸惑われないように、当所では後見人就任後にご親族に医療的ケアに関する意向に関する照会書をお送りし、いろいろな場面を想定したご希望を前もって伺うことにしています。
成年後見人の役割は書面を送って回答をいただければ、それで終わりとは考えていません。
医療や福祉関係者と連携の上、その時々の状況に応じて被後見人が適切なケアを受けらるようにサポートすることはもちろんですが、ご親族に寄り添いながら、心の折り合いをつけられるように支えていくことも重要な役割だと考え日々業務にあたっています。




